◆ペシャワールの人々

 タリバーンの聖職者会議がオサマ・ビンラディン氏に対してアフガニスタンからに自主退去するように促す決議をしたそうです。
 しかし、退去の時期などが明示されなかったことで、アメリカ側は不満をあらわにして着々と報復への臨戦態勢を整えています。

 今後のアフガニスタンの出方が注目されるわけですが、私が気になって仕方がないのはパキスタンの北西辺境州に住む人々のことです。
 カイバル峠を挟んでアフガニスタンと国境を接する地域の人々は、パシュトウン族が大半を占めています。隣国、アフガニスタンにも多くのパシュトウン族がいます。いわば同胞なのです。
 パキスタン政府はアメリカのテロ撲滅作戦への協力を表明いしていますが、「同胞を裏切ることはできない」と反対運動を活発化させています。

 実は、昨年9月に北西辺境州を旅し、州都・ペシャワールにも2泊しました。

 イスラム過激派が多い地区、というので緊張しましたが、人々は親切で日本びいきでした。「日本人は礼儀正しく、勤勉だ。尊敬している」と話してくれた人もいます。子供たちも「ジャパン、ジャパン」と親しみを込めて近寄ってきました。バザールは活気に満ち、ずいぶん楽しい思いをさせてもらいました。

 たが、カイバル峠への道筋で粗末なテント暮らしをするアフガニスタン難民の姿には暗い思いをさせられたものです。カイバル峠の展望台からアフガニスタン側を眺めていると、急な坂道を越境して物売りに駆けつけた少年がいました。パキスタン北西辺境州とアフガニスタンはそれほどの至近にあるのです。

 最近のTVニュースを見ていると、ペシャワールの人々から底抜けに明るかった笑顔が失せてしまいました。いきり立った表情で星条旗を燃やす姿は憎しみの表情です。子供たちは「聖戦(ジハード)」を叫び、「命なんか惜しくない」とニコニコと話しています。そんな子供たちの表情を見ていると、自分の少年時代がダブってきます。

 訳もわからず「米英鬼畜」を叫び、「特攻隊員になります」と胸を張っていた国民学校4年生。ペシャワールの子供たちも同じ思いなのでしょう。

 「日本人を尊敬する」と言っていた人々は、自衛隊派遣に積極姿勢を示す政府の姿勢をどのように見ているでしょうか。敬愛から憎しみへ。日本人を見る目も変わってくるでしょう。アメリカに対する憎悪はますます拡大し、報復のありよう次第では最悪の事態も心配されます。

 短時間とはいえ、身近に接した人々。「報復」が最小限に収まって、この人たちとにこやかに会話ができる日が再び訪れることを願うばかりの昨今です。