◆気になる言葉

 
きょう6月1日、表紙の写真を「子供シリーズ」から「自然風景シリーズ」へと衣替えしました。

 9月末まで海外の湖や山、氷河、滝などを紹介します。いささかなりの涼感をお届けできたら、と思っています。

 山は花の季節を迎えました。梅雨の晴れ間に高山植物を求めて登る人も多い時期です。

 登山というと、私には気になるというか、心に引っかかるというか、そんな「ひとこと」があります。

 3年前の梅雨の晴れ間。暑い日でした。私は近くにある西方ガ岳に登っていました。764mで、それほど高くはありませんが、0メートル地点からの登りですから、けっこうきつい行程です。

 汗を拭き拭き、7合目くらいまで達したときでした。中年の男性が1人、下山してきました。

 「こんにちは」。挨拶を交わして、すれ違おうとしたときです。その男性が「いま何を考えて登っておられましたか」と尋ねてきました。

 「?」。とっさの返答に困りました。「暑くてしんどいな」。そう感じていましたが、さて何を考えていたのだろう?。思い出せません。

 突然の質問に窮して「別に何も考えていませんでした」と答えてしまいました。

 「無我の境地ですか。羨ましいです。私もそんな登山がしてみたい」。50年配の男性はそう言って足早に去っていきました。

 「狐につままれた」思いで、呆然と後ろ姿を見送っていました。

 「無我の境地なんて高尚なものではなかった。ただ、しんどかっただけだ」。その場に立ちつくして、しばし自問自答。

 「あんまり辛そうな顔をしていたので、冷やかされたのかな」。そう思い直してみますが、どうもすっきりしません。

 それからというもの、山に登るたびに男性の「何を考えていましたか」の一言が、ひょいと頭をかすめます。

 「あっれ、いま何を考えていたかな?」。思い出せたり、出せなかったりですが、どうも気になって仕方がない言葉ではあります。

 気になる言葉、気になる人…。誰にでもあると思います。

 これから何年、登山を続けることができるかわかりませんが、男性のひと言は私をとらえて話さないように思われます。

 表紙の衣替えから、とんでもない話に脱線してしまいました。