◆ピラミッドに上りたい!

 6年越しの思いが叶ってメキシコへ出かけます。
 旅行会社のPR文を拝借すると「密林に眠る神秘のマヤ文明をじっくり旅する」ツアーということになります。

 「私が案内しますから一緒に出かけませんか」という、ある旅行会社の添乗員さんの誘いを断って以来、「いつかは」の思いが心のひだに張り付いていました。

 その時は、他に見たい、訪れたい場所が幾つもあって先送りにしたのですが、チャンスというのは天の邪鬼なところがあって、その後は巡ってきそうでなかなか来ないという状態が続きました。

 旅行会社の設定コースがしっくりこなかったり、日程が合わなかったりして逡巡しているうちに、あの誘いから6年が経過してしまいました。

 それが最近になって、ひだに張り付いていた「メキシコ」の四文字がぴくぴくとうずくようになりました。

 自他共に認める物見遊山派ですからマヤ文明だ、アステカ文明だ、サポテカ文明だ、などといってもしたり顔できるような知識は持ち合わせていません。

 その私が「メキシコ」にこだわるのは、ピラミッドに上ってみたいという潜在的な思いが強いからかもしれません。

 ギリシャやローマ時代の遺跡には見られない風変わりな装飾、例えば大きな口を開けた獅子頭のような雨神、ケツァールコアルトなどにももちろん心惹かれます。

 それにもまして「はるばるメキシコまででかけるなら、登山並みといわれるピラミッド上りに挑戦してみたい」という思いがあり、その思いが最近になって「挑戦してやろう」に変化してきたのです。

 メキシコシティの近くにティオテワカンという都市遺跡があり、そこに高さ65mの「太陽の神殿(ピラミッド)」が雄姿をみせています。エジプトのキザにある、あの有名なクフ王のピラミッドに匹敵する大きなものです。

 急勾配の階段を這うようにして頂上に立つと、都市全体が眺望できて天下を取ったような気分になれるそうです。
 しかし、問題は降りるとき。体験談によると「なぜこんな所に上ったのか」と誰もが後悔し、お尻を付きながら1段1段降りる「恐怖の階段」といわれます。

 そのような体験談を読んだり、聞いたりしているうちに「今年が最後のチャンスかも知れない」と思うようになってきました。
 体力の衰えを感じる昨今ですが、「いまなら上れそう」という自信と気力は、まだ衰えていません。

 しかし、「来年も上れる」は保証の限りではありません。老いというのは悔しく、情けなく、腹立たしいものです。そんな焦りにも似た心境が「メキシコ」の四文字をクローズアップさせたようです。
 
 物見遊山の海外旅行も26回目になります。やや旅慣れたとはいえ旅立ち前の高揚は1回目となんら変わりません。
 ルートーマップを辿りながら未知の世界を、あれこれ想像する机上の旅だけで胸がときめいています。それもまた旅の楽しみなのです。

 想像から体験へ。私の「メキシコ遊山」は間もなく始まります。