◆名将は晩節を汚したのか

 野村克也さんがプロ野球、阪神タイガース監督を辞任しました。

 周知の通り、妻でタレントの沙知代容疑者が脱税容疑で逮捕されたことで、けじめをつけての辞任でした。

 三顧の礼をもって迎えられた阪神を、このような形で退団するのは無念だったことでしょう。

 しかし、TVや新聞を通じたファンの声は意外にも冷たいものでした。「惜しい」、「残念」、「頑張ってほしかった」という声がほとんど聞かれなかったのはどうしてでしょうか。

 「妻を監督できなくて、選手たちを束ねられるか」という辛辣な意見さえ聞かれました。ファンの心根には同じ思いが沈殿していたのかも知れません。

 野村克也と長嶋茂雄(以下、敬称略)は私と同年代です。それだけに野球界に君臨する2人の言動にはずっと注目してきました。

 長嶋は巨人という人気球団一筋に歩み、先天性のセンスに恵まれて常に華やかな表舞台に立っていました。

 一方の野村はドラフト外で南海(ダイエーの前身)に入団。努力を重ねて様々な記録をつくりました。「生涯一捕手」と自称してロッテ、西武を渡り歩き、何かにつけて長嶋と対比されました。

 勘ピューターと言われて万事が派手だった長嶋、データーを駆使してID野球の元祖と言われた野村。どちらかといえば地味な野村に肩入れしました。

 しかし、自らを「月見草」と言い出したころからの野村はあまり好きになれませんでした。

 妻の沙知代容疑者が華々しくなるに連れて、暗さが際だってきたように思えたからです。

 ワイドショーの専属タレントのように騒がれる妻。「芸能界のお騒がせ女」などと揶揄される妻。
 野村は采配をふるいながらどんな気持ちだったのでしょうか。

 普通の夫婦であれば、言動に行き過ぎがあれば注意したり、たしなめたりします。それが当たり前のこととして受け入れられるはずです。

 お家の重要問題ともなればなおさらのことです。縁あって結ばれ、共同生活を営んでいるわけですから相談し合うのが普通の夫婦の有りようだと思います。

 沙知代容疑者の言動を巡ってどんなに騒がれても、私の知る限り、彼から妻を非難する言葉は聞こえませんでした。

 脱税容疑についても、一部マスコミでは早くから伝えられていました。もし日ごろから妻の言動に関心を持っていたのなら、当然糺されるべき事柄でした。

 東京都の一等地に構えた豪邸。外見的にはすこぶる和気相合に振る舞っていた夫婦。あれは虚像だったのでしょうか。

 結果は最悪の事態になり、続投が決まっていた来シーズンの監督を棒に振ってしまいました。

 追われるごとく去った野村。「晩節を汚した男」との汚名を、これから背負い続けて生きるのでしょうか。

 そうは思いません。野村に科せられた課題はこれからです。

 このような事態を招いた責任は当然彼にもあります。賢明な人ですから十分心得ているはずです。

 我が子から「彼女の言葉の97%はウソです」とさえいわれる妻。
 その欠陥を補って「虚像の夫婦」から「実直の夫婦」へと采配を振るうことができるのもまたは野村以外にはできないことです。

 「阪神再生」を道半ばにして果たせなかった無念さを、今度は「妻の再生」で晴らすべきです。

 これから問われるのは、その手腕だと思います。