◆好きな野坂岳

 私の趣味の一つに近場の低山歩きがあります。

 季節ごとの風景を愛でながらゆっくりと登ります。山歩きの醍醐味です。

 これまでに登ったどの山にもそれぞれ愛着がありますが「その中でも特に好きな山は?」と尋ねられたら、やや迷いつつも「敦賀市の野坂岳」と答えるのではと思います。

 標高914m。一等三角点の独立峰のような山ですから頂上に立つと遮るものは何一つありません。あるのは360度のパノラマ風景だけです。

 敦賀市内と敦賀湾、加賀の白山、百名山の荒島岳、琵琶湖、伊吹山などが一望できるのです。

 野坂岳は退屈をしない山なのです。絶景が登山道の各所に散りばめられており、汗だくの登山者を癒してくれます。

 昨日(4日)も登ってきました。登山口は標高180m地点にありますから、頂上までの高度差は700m余りです。

 やや暗いスギ木立を登って30分ほどで、最初の楽しみである水飲み場です。敦賀市の名水は四季を通じて水量たっぷりです。

 スギ木立を登りきると標高は500mほどに。この辺りから視界が開け、眼下に敦賀市内が一望できるようになります。
 11月中旬には加賀の白山が真っ白な頂を見せてくれます。

 ガレ場の登山道が「枯れ葉道」に変わってきました。ブナやミズナラの落葉がまるで絨毯のように敷き詰められていました。
 数日来の雨で一気に散ってしまったのでしょう。

 期待の紅葉は残念ながらぱっとしませんでしたが、さくさくと落ち葉を踏みしめながらブナの並木を歩むのもまた快感です。

 680mの一の岳まではやや厳しい上り坂ですが、それを過ぎると、今度は絶景を楽しむ余裕が出てきます。

 とくに、二の岳から三の岳のブナ並木は「登って良かった」と思わせる爽快な平坦道です。

 最後の一踏ん張りで頂上に立ちます。私が登ったとき、頂上は無人でした。枯れススキをなでていく風の音だけが友達です。

 眼下に広がる敦賀市内を望みながら、にぎりめしを食べました。その美味いこと。筆舌に尽くしがたい、とはまさにこのことだろうと思います。

 30分ほどで下山しましたが、途中でたくさんの人に出会いました。「こんにちは」。道を譲り、挨拶を交わしながら行き交いましたが、滋賀、岐阜、愛知県下からも大勢訪れていました。

 静寂を楽しんだ頂上は、わずかの時間差で明るい声で埋まったことでしょう。

 北陸の冬は足早です。これから何度登ることができますか。頂上から眺める山々は登る度に白色の範囲を広げていくでしょう。

 紅葉から白銀へと移って、野坂岳にやっと休息の時が来るのです。