◆新緑、青空、そして吾

 
13日、福井県嶺南地方にある野坂岳(914m)に登りました。

 私の好きな山の一つですが、登ったのは昨秋以来、久々のことです。落葉に埋もれていた枯れ葉道は、新緑が木陰をつくって登山者の癒しの道に変わっていました。
 
 自宅の2階ベランダから全景が望めます。一の岳、二の岳、三の岳、そして頂上。波打つように見せる頂。全山を包む青葉が日ごとに、その色を濃くしています。
 
 登山口は自宅から車で20分あまりにあります。
 
 谷川のせせらぎを聞きながらやや急な坂道を登り始めます。登山口から約30分。水飲み場でのどを潤し、隣に鎮座する石仏の「とちの木地蔵」に手を合わせて、いよいよ本格的な登りに入ります。

 突然、頭の上で「ホーホケッキョ」のさえずり。それが合図のようにあちこちで合唱が始まりました。降るようなウグイスのさえずりです。

 しばらく立ち止まって、ソプラノあり、アルトあり、のコーラスに耳を貸し、ふと見上げると真っ青なキャンバスに鮮やかな新緑が描き出されていました。

 幼稚園児から小学生ほどに成長した若葉が、青空に吸い汲まれてしまいそうです。「きれいやな」。それ以外に言葉は見つかりません。

 登るにつれて日本海や町並みが眼下に広がってきます。田圃の早苗も元気そうです。

 登山口から約1時間30分。一の岳です。ここまでがきつい登り。整備された登山道に安心して先を急ぐと、ここまででばててしまいます。ゆっくり、ゆっくりが肝要です。

 一息入れて、しばらく坂道を辿ると、周辺の山々が望めるようになります。足もとに咲く春の野花は、この時期には少なくなっていました。それでもところどころで黄色、紫色、ピンク、白色などが風にそよいでいます。

 やがて平らな道に。多少の起伏はあるものの二の岳から三の岳にかけては体力を回復できる場所です。山ツツジが残っていました。しばらくは木立のトンネルを歩き続けます。

 ウグイスが突然の挨拶です。頭上すれすれで鳴いているようですが、姿は見せてくれません。
 目の前に急坂が現れました。さえずりを友に最後の踏ん張りです。

 2時間ほどで頂上に達しました。360度のパノラマです。遠くに雪の白山がぼんやりと浮かんでいます。

 ぐるり目を転じると、琵琶湖と伊吹山が、百名山の荒島岳が、日本海が、薄霞の中に眺望できます。絶景。近郊の人々に愛される風景は四季折々の風情を楽しませてくれます。

 この日の山行、実は数日後に去ってしまう65歳の記念登山でした。「まだ登れる」。体力確認の登山でもありました。

 最近は単独で登ります。体力の衰えもありますが、マイペースの登山の醍醐味がようやくわかってきたような気がします。絶対に無理はしません。先も急ぎません。
 
 咲く花を愛で、野鳥のさえずりにしばし我を忘れ、緑に中に埋没します。その時々に「至福」を感じながら歩を進めます。

 やがて66歳。低山ならまだ登れそうです。体力確認の登山は新緑と青空に迎えられ、その仲間に加えてもらって爽快な時間を得ることが出来ました。

 これからの登山は自然に迎えられる「感謝登山」と命名して、マイペースの至福を味わうことにします。