◆秋の山歩き

 久しぶりに近場の山歩きを楽しみました。
 
 野坂岳(914m)は紅葉にはまだ早い時期でしたが、路傍に咲く秋の花が心を和ませてくれました。

 自宅から登山口まで車で20分。思い立ったらすぐに出かけられる眺望の良い山です。

 登山口から30分ほどは、靴底から伝わる感触を楽しみながら1歩1歩、ゆっくりゆっくり進みます。

 やがて谷川の流れが聞こえてきます。枯れススキの間から市内が望めるようになると、じんわりと汗ばんできます。

 待っていてくれるのが、地蔵さんと名水です。

 地蔵さんに手を合わせ、名水でのどを潤して、本格的な登りが始まります。

 急な上り坂は、なまった足腰にこたえますが、色とりどりの花から元気をもらって、頑張ります。

 リンドウがぽつんと咲いていたりすると、「おお、今年も咲いたか。おまえも元気だったんだな」などと会話が弾みます。

 いつの間にか谷川の流れは遠ざかって、静寂が支配する山懐へと入りました。

 春。シャワーのように囀りを降らせていた野鳥の姿はありません。

 時々、かさっと音がしてどきっとさせられます。落ち葉です。

 一の岳までの1時間30分ほどが辛い登りです。朽ちかけたベンチでしばしの休憩をとり、二の岳、三の岳へと目ざします。

 だんだん展望が開けて、市内が一望できるようになります。敦賀湾と山々に挟まれるように拓けた町が手に取るようです。

 やがて平坦な尾根道です。夏には木陰のトンネルをつくってくれていた木々も精彩を欠いてきたようです。

 足下に転がる山栗のイガ。もう少しすると、落葉が敷き詰められ、枯れ葉道に変貌します。

 二の岳から三の岳にいたる尾根道が、私の一番好きな場所です。

 目の前の急坂を上りきれば360度のパノラマ展望が楽しめる頂上です。

 さっそく、握り飯を頬張ります。これがまた美味い。世の中にこれほどうまい食べ物があるか、そう思いたくなる至福の時間です。

 伊吹山が、荒島岳が見えます。もう1ヶ月もすると、雪の白山が山並みの上に浮かびます。

 野坂の山が紅葉を真っ盛りを迎えるのももう間近です。

 テロ問題が落ち着くまでは海外旅行もお預けですから、せっせと秋の山歩きを楽しみたいと思っています。

 本題から逸れますが、山歩きの楽しみの一つに行き交う人たちとためらいなく挨拶ができるということがあります。

 この日も下山途中でたくさんの登山者に出会いました。
 「こんにちは」、「お先に」、「お気を付けて」。知らぬ同士が道を譲り、譲られて交わす挨拶。

 深山幽谷とはいかないまでも、山懐に抱かれれただけでこれほど素直になれるすばらしさ。

 老骨にむち打つだけの価値はありすぎるほど、あります。これが山歩きのもう一つの賛歌です。