◆神宮寺のお水送り

 「お水取り」。古都に春を告げる催事として親しまれている奈良・東大寺二月堂の修二会本業が1日から始まりました。

 これから14日までの間、練行衆たちによる様々な行が続けられ、華やかな「おたいまつ」で幕を閉じます。

 「お水取り」の行は12日に行われます。二月堂の下に閼伽井屋と呼ぶ井戸があります。そこから若水を汲んで内陣に納める行です。

 ところで、その若水は福井県若狭から送られたもの、ということになっています。あまり知られていないことですが、本当の話なのです。

 寺の町といわれ、名刹が多い小浜市。神宮寺というお寺で毎年3月2日に「お水送り」の行が営まれます。

 境内の「若狭井」から汲んだ水を近くの遠敷川の鵜の瀬に流すのです。水は10日間かけて二月堂の閼伽井屋に至り、12日に汲み上げられるというわけです。

 神宮寺でも2日は朝から様々な本行が営まれます。そして、夕闇が迫るころ、いよいよクライマックスの水送りが始まります。

 赤装束の僧が本堂の回廊で大松明を振りかざす「達陀(だったん)」の行、さらに大獲摩に火が焚かれます。

 その火が松明にともされ、山伏姿の行者や白装束の僧侶ら約300人の行列が、上流の鵜の瀬へと向かいます。

 鵜の瀬で流されたお香水(こうずい)が10日後に二月堂に届くといわれているのです。

 二月堂の閼伽井屋は別名を若狭井というそうです。浅からぬ因縁のあることが、このことからもわかります。

 東大寺の「お水取り」に先駆けた「お水送り」の縁起については諸説あるようですが、今回は省略します。

 二月堂のお水取り催事は華やかです。特に12日から14日まで行われる炎の乱舞「達陀」は多くの観光客を集めます。地元の人が「お水取り」のことを「おたいまつ」と呼ぶほどで火が主役です。

 一方、地方の小都市で行われる「お水送り」の催事は地味です。
 しかし、最近、地味な催事にも目を向ける人が増えてきました。遠方からわざわざ見学に訪れる人も少なくない、と聞きました。

 「お水取り」を支える「お水送り」。多くの人に認知されるということは、伝統行事そのものの保存にも役立つことであリます。

 若狭の春はまだ先ですが、行に参加する人々の心は二月堂の「おたいまつ」に負けないほど赤々と燃えているに違いありません。