◆西方岳から蠑螺岳へ

 小春日和に誘われて西方岳から蠑螺(さざえ)岳を縦走しました。

 日本地図を広げて福井県嶺南地方に目をやると、日本海にちょこんと突きだした敦賀半島があります。西方岳は標高764mで半島の最高峰です。

 敦賀市内から海沿いに車で20分余り。国宝の朝鮮鐘を収蔵する常宮神社の境内に車を停めさせてもらって登山口へ。

 横手の集落を抜けると、すぐに登山口です。西方岳はさほど高い山ではありませんが、0mからのスタートになります。

 起伏に富んだ登山道は、近くの野坂岳に比べて登る人も少なく、単独行の私はザックに鈴を取り付けて登ることにしています。

 いきなり階段が続きます。ここはゆっくり、1歩1歩、呼吸を整えながら登ります。

 集落の甍(いらか)が逆光を反射させています。30分ほどで階段は姿を消し、急な坂道です。

 11日、日曜日。珍しいことに7、8人の中年男女のグループに出会いました。

 お先に失礼して岩場の道を辿ると、銀命水と名付けられた水飲み場があります。水量の少ない時期なので、ちょろちょろ状態でした。

 さらに進んで、500m地点にオウム岩があります。眼下に敦賀湾が眺望できる絶景の場所です。

 春以来、今年2度目の「西方詣で」ですが、体調はすこぶる快調です。

 休憩をせずに上を目ざします。西方岳の面白さを満喫できるのは、この辺りから。

 急峻な上り坂にあえいでいると突然、平坦な道が現れます。枯れ葉が敷き詰められ、ドングリの実が散りばめられた林間をサック、サック。なんとも心地のよい響きです。

 あえぎと癒し。これを繰り返しながらマイペースの歩みを続けます。平坦部はまるで「息継ぎの道」に思われます。

 頂上に近くなるに連れて、登山道の落葉が厚さを増してきました。先ほどまでのサック、サックからザック、ザックに変わり、足下にまとわりつく感じです。

 葉を落とした木々の根元に、緑葉や黄葉の2代目、3代目が育っています。山の営みに元気づけられたりもします。

 最後の胸八丁を頑張ると、764mの頂上です。

 頭部に新雪を乗せた加賀の白山が遠くで輝いています。眼下には真っ青な日本海、敦賀湾。鈍色(にびいろ)の海に変わる前に見せてくれたつかの間の美しさです。

 一息入れて、1.8km先の蠑螺岳へ。

 やや起伏はあるものの、歩きやすい尾根道の連続です。枯れススキが揺れ、笹の葉が揺れています。

 大半の木々はすでに葉を落とし、ひとときの眠りに入った感じです。木漏れ日の中をゆったりした足取りで進みます。

 下手な口笛でも吹いてみたい衝動に駆られますが、せっかくの自然のハーモニーがぶち壊しになります。

 横道にはいるとカモシカ岩などもありますが、今回は寄り道をせずに蠑螺岳を目ざします。

 40分ほどで右手に敦賀湾内の小さな水島が見えて、標高685mの山頂到着です。

 岩場になった頂上は狭く、10人ほどで満席状態になりそうです。

 岩の上に立って四方を眺めると、輝く白山連峰や近江の伊吹山などの山々が望めます。右手には敦賀湾、左手には若狭湾。

 パノラマの風景に疲れが吹っ飛ぶ瞬間です。

 1番大きな岩の上に腰を下ろして、大きな握り飯2個を頬張り、同じ道を引き返しました。

 1時間ほど下って浦底という部落からバスで常宮へ戻るのが常道です。

 大半の登山客はそちらを選ぶのですが、私は西方岳までの尾根道が大好きなので、あえて往復のコースをとりました。

 尾根道をただ1人。背中の鈴がチリン、チリン。足下の枯れ葉がザック、ザック。それ以外の音はありません。

 その音さえ消してしまいたくなって、時々立ち止まり、しばし静寂を楽しみます。すっと通り抜ける風に落葉がカサッ。我に返ってまた歩み始めます。

 正味5時間30ほどの行程。晩秋の陽光を浴びながら爽快な縦走を楽しむことができました。