◆雪起こしと赤い空

 鈍色(にびいろ)の空に閃光が走って「雪起こし」が轟いています。
 
 北陸の冬は雷鳴が我が物顔して暴れ回る季節です。天気予報から「雷注意報」が消えることは、ごく希にしかありません。

 雷鳴。本来は夏の季語です。それが「雪起こし」になると冬の季語になるのですから、冬の雷は北陸に限らず、雪国ならどこにでもある現象なのでしょう。

 気温が10度前後の場合は雨を降らせ、それ以下になると霰やみぞれを降らせる荒天に。

 そして「日本海の上空5000mにマイナス30度の寒気団」などと報じられるようになると、いよいよ雪起こしの出番です。

 たれ込めた雲に山並みが覆われると、閃光一条、ピカッ、ゴロゴロです。まるで雲を引き裂くかのような勢いで暴れ回ります。

 高浜虚子が「唯一つ大きく鳴りぬ雪起こし」と詠みましたが、そんな生やさしいものではありません。天空を揺るがす轟音の連続発射です。

 「雪起こし」とは、辞典などには「雪が降る前に鳴る雷」とありますが、雪起こしの由来までは証してくれません。

 轟音が雪を目覚めさせるから、いや猛烈な降りっぷりはまるで地上から立ち上がっているかのように見えるから…??。

 3日、当地を見舞った降雪は後者を思わせるものでした。

 5日から再び寒気団が南下して大雪になるそうです。いまは思い出したように響く雷鳴ですが、やがて得意の連続発射で雪を呼び起こすことでしょう。

 雪国の冬の現象に「赤い空」というのもあります。

 暗い上空が何となく赤みをおびて見えることがあります。地元の人たちが「空赤いで。今晩はよう降るで」という赤い空です。

 気象学的にはどうなのか知りませんが、そのように見える夜は確かに雪になります。それも、しんしんと積もる大雪に、です。

 「大雪の前触れという赤い空」
 「鈍色(にびいろ)の空に一閃雪起こし」

 雪との戦いは序盤です。しかし、雪国人はへこたれません。雪に耐え、春の芽吹きに備える草花のように、しなやかで逞しいのです。

 この拙文を書いている間に閃光は数を増して、大粒の霰が叩き付けてきました。
 
 雪の夜、ぐつぐつと煮えたおでんとでもいきましょうか。