後編3(市立敦賀病院編B


10月1-2日
 [状況]1日は土曜日なので試験食は妻との2人3脚で。飲み込む力がついてきたのか、むせることもない。医師や看護師から「嚥下(飲み込み)の時は誤嚥(ごえん)のないように」と言われているので神経を使う。日に3回を目標にしている自主トレも励行。
 2日も2人3脚の食事。誤嚥に神経を使うので疲れる。妻が洗髪をしてくれた。

10月3-4日
 [状況]3日は大好きな野坂岳を見た。ベッドに腰掛けて少しずつ移動したら頂上付近を眺められた。元気なころはよく登った山だ。もう1度、登ってみたい。
 車いすを自力で動かしてみた。かなりの腕力を要する。20m進むのがやっとだった。血液検査、レントゲンとも異常なし。
 4日から市立看護学校3年生が研修に。部屋の担当は舞鶴市出身の小柄な学生。回診の折、小林医師は「肺に陰りはあるが、問題はない」と説明した。
 車いすで本館1階のリハビリ室までいった。明日からここに通って歩行訓練などを受ける。このところ便秘気味。薬の世話になった。

10月5-6日
・平行棒で歩く
 [状況]5日は外来病棟のO看護師が、その後の様子見に来てくれた。最も病状がひどいときに世話になった人。「グローブのような手だったのに、ここまで回復して」とびっくり。
 妻に車いすを押してもらって、重症のころの本館6階病室を訪れてみた。当時のことはほとんど記憶にないが、感慨深かった。
 リハビリ室では手足の訓練の後、大塩理学療法士の進言で平行棒を伝い歩きした。といっても2歩、3歩。それでも妻は涙ぐみ、研修の学生さんは拍手をしてくれた。
 6日から試験食に栄養ミルクが追加。宮木言語聴覚士が栄養不足を心配してくれたのだ。昼食時だけ学生さんも見学。看護師に代わって体温や血圧測定もする。
 2回目のハーバード浴。今回はぬるめだった。今月からまた岸田医師の世話になる。大便の事などを聞いた。 

10月7-8日
 [状況]7日は自主トレの後、便が出た。リハビリ室での平行棒伝い歩きは3mを往復3回。平行棒を握る両手の力を借りて歩いている。脚力、腹、腰の筋力はまだまだ弱い。それでもベッドと車いす間の移動はかなりスムーズになってきた。
 8日は自主トレのみ。岸田医師が腹の具合を診てくれた。車いすを妻に押してもらって院内散歩。乗り降りは自力で出来た。
 20:00になると、面会者に帰宅を促す院内放送がある。これまでは何の感情もなしに耳にしていたのだが、夜の点滴がなくなってからは「ああ、今日も1日、苦しまずに過ごせた」と感慨にふけりながら聞くことが多くなった。

10月9-10日
 [状況]9日は試験食開始から10日。独特の「とろみ食」にも慣れた。妻は自主トレの合間に熱いタオルで体を拭き、洗髪をしてくれた。最近は看護師の訪問も必要最小限になってきたよう。だれかが「病院というところは、元気になった患者には冷たいところ」といっていた。元気印を与えてくれたということだろう。
 10日はやや筋肉痛。自主トレのやり過ぎか。車いすで本館の7階へ。窓越しに海を眺める。その帰りに人工透析の部屋がある2階へ。水口主任が部屋を見せて「あなたもあのように透析したのだよ」と説明してくれた。記憶にない頃のこと。夢物語を聞いているようだった。

10月11-12日
 [状況]11日も血圧、体温は安定。咳込みも少なく、もっぱらリハビリに力を注ぐ。学生さんが足を洗ってくれた。
 12日のリハビリで四つんばいになれた。大塩療法士も肉が付いてきたと言ってくれる。岸田医師からカリウムが不足気味なので野菜ジュースを飲むように勧められた。
 宮木言語聴覚士が卒業試験のつもりだったという昼食を上手く飲み込めて、「とろみ食」から2段上の「きざみ食」への昇格が決まった。

10月13-14日
・きざみ食へ
・シャワー
 [状況]13日は昼食から「きざみ食」に代わった。その前の段階「みじん切り食」を飛び越えての特進。やや固めのお粥と2.5cmほどのサイコロ状に刻んだ鶏肉、人参など。よく噛んで慎重に飲み込んだ。食後に30ccの水を飲んだ。むせることもなく、まずは合格。久しぶりの固形食物。美味しく感じた。
 学生さんは食事時やリハビリ時に付き添ってくれる。

 14日は岸田医師としばらく歓談。趣味の話、家族の話…心のケアになった。体のリハビリは40分間。四つんばい、横歩きなどでへとへと。筋肉がついていないので持続力がない。リハビリ室には自分よりずっと年上の男女も多い。その中でも一番弱々しいと言われてがっくりだった。
 Y看護師の手助けで初めてシャワーを浴びた。換気扇からの風が冷たかった。

10月15-16日
 [状況]15日は土曜日なので、もっぱら自主トレ。岸田医師の指示を守って野菜ジュースを続けている。血圧は下がやや高めだが許容の範囲内。箸を持つ練習を始めた。
 16日も「1.2畳の我が住み家(ベッド)」で足を上げたり、手を動かしたりの自主トレ。きざみ食だけでは物足りないので、妻はピーマンやブロッコリー、煮物などの総菜やヨーグルト、チーズを持参して補給してくれた。 

10月17日
・常食に昇格
 [状況]17日は「きざみ食」から「常食(普通食)」になった。やや軟らかめながら普通のご飯、それにオムレツ、こいもと人参などの炊き合わせ。食事は健常者の仲間入りというわけだ。
 リハビリは段々厳しくなる。四つんばいになって足を上げたり、手を上げたり。その甲斐あって平行棒を伝い歩きする姿勢もよくなってきた。大塩療法士から「5か月間も寝たきりでいたにしては順調な回復ぶり」と褒められ、疲れが吹き飛んだ。「年内に退院できるかも」。密かに喜んだ。

10月18日
・院長回診
 [状況]朝食はご飯、納豆、ナスの煮物、のりの佃煮、栄養ドリンク。それに妻が持参のブロッコリー、カボチャ、ヨーグルト、野菜ジュース。こう並べると、いかにも食欲旺盛に思えるが、胃袋が小さくなったのか、食べる量は少ない。岸田医師が様子を見に来てくれた。
 痰はよく出るが、咳込みは少なく、血圧や体温も安定。回診の池田院長は「健康優良児のよう。奥さんが顔色を変えて看病してくれたことを忘れないで、感謝することだね」といった。
 朝の自主トレをやりすぎたのか、本番では力が入らず不調。Y看護師の手助けで2回目のシャワー。足を温めて気分良し。

10月19日
・イラスト集
 [状況]リハビリをM看護師と学生さんが見守ってくれた。平行棒を伝い歩きする姿にM看護師は「感激!」と拍手。1度、看護師に見てもらいたいと言っていた大塩療法士もニコニコ顔だった。
 学生さんがベッドで出来るリハビリをまとめたイラスト集をプレゼントしてくれた。大塩療法士に取材して仕上げたという。上手く描けている。嬉しく頂戴した。

10月20日
・喉のリハビリ終了
 [状況]昼食後、喉の聴診をした宮木言語聴覚士は「もう問題ありません。私の仕事は今日で終了します」と卒業を認めてくれた。いつもにこやかに親切だった。感謝の気持ちで胸が詰まった。 
 大塩理学療法士は「歩ける日は遠くなさそう」、また岸田医師は最悪の状態だった頃を振り返って「本当に頑張りましたね」と嬉しいことを言ってくれた。1人前に急接近したような気分。
 夕刻、学生さんの研修が終わって、教師とともに挨拶に。昨日プレゼントしてくれたイラストが気に入らないので描き直すという。自分は大満足しているのだが。 

10月21日
・自力でトイレへ
 [状況]快挙の日。車いすで病棟廊下の多目的トイレへ行った。案ずるより産むが易い。万事上手くできて大きな自信を得た。
 昼食時、宮木言語聴覚士が来てくれた。卒業させても心配だったのだろう。看護学校の1年生が研修に。社会人経験のある学生さんと談笑。「思いやりのある看護師さんになって」と激励した。

10月22日
 [状況]正直なところ、病院食はどうも好みに合わない。カロリー計算された治療の一環であることは重々承知しているのだが、妻に野菜、煮物などを補給をねだる。今朝も納豆、キュウリ、トマト、ヨーグルトを持ってきてもらった。
 元気なころは好き嫌いのないのが自慢だったが、入院中にわがままになったようだ。ミカン、柿などの季節の果物も食べられるようになった。

10月23-24日
 [状況]23日は車いすで本館へ散歩。自力でかなりの距離を動かせるようになった。血圧や体温は安定。肺の炎症は大人しくなっている。
 24日も昼食時に宮木言語聴覚士が様子伺いに。小林医師に現状を伝えるという。大塩療法士からは「背中にも肉が付いてきた。順調」との言葉。

10月25-26日
 [状況]25日は血液検査。岸田医師は「カリウムは通常に、コレステロールは正常、腎臓の機能も良好」と知らせてくれた。
 最後のハーバード浴。この入浴は重症患者用なので、これも卒業というわけ。リハビリ室で歩行訓練を見たS看護師は「すごい!」と褒めてくれた。
 26日はリハビリに成果が見られた。平行棒の伝い歩きだけでなく、よたよたながら歩行器でも歩けた。手が震えてミミズ文字がやっとだった文字もしっかり書けた。また、箸を使う訓練では豆をつまめた。
 岸田医師へも明るい報告が出来て、ますます自信を深める。 

10月27日
 [状況]このところ妻は昼食、夕食とも病室で食べている。差し入れ用と自分用の弁当を持参しての日勤だ。時間の節約になるという。入院以来、1日の休みもなく病院通い。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
 西宮市の友人、Mさんがキプロス、イスラエルの旅行記を送ってくれた。読み進むうちに体調のことを忘れて、むずむずと旅心がくすぐられた。早く元気になりたい!。

10月28、29、30日
 [状況]28日は特記すべきこともなく、淡々と過ぎた。29日は体が重く感じられ、しんどい。こんな日もあるだろう。
 30日も朝食に納豆、ヨーグルト、チーズを追加した。この3点セットは朝食の追加定番になっている。車いすでの散歩中、窓越しに夕日を眺めた。半年ぶりに見る夕焼け空。感激だった。花鳥風月にも心を向けられるようになってきた。

10月31日
 [状況]歩行器の手助けでリハビリ室を3周できた。薄皮を1枚1枚はぐように前進している。
 気になる右足指先のしびれに関して、岸田医師は神経系の損傷は治りが遅いという。夕刻、顔が赤いので体温を測ったが、異常は見られなかった。
 いまは普通に飲めるお茶を、1日にはとろみ剤を入れて飲んでいた。新谷医師が言ったように、1か月間で見るとずいぶん回復したな、と思う。

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