●アザーン、朗々のひびき

 トルコの首都、アンカラ。ホテルの前のモスクから朗々と響いたアザーンとは、何ぞやという話です。

 アンカラに限らず、イスラムの国を旅すると、朝な夕なにモスクのミナレットから流れるアザーンを耳にします。
 早朝の静寂を破る朗々の響きは、異教徒にとって時には騒音にも感じられることがありますが、これを聞くと「ああ、イスラムの国にいるんだな」という実感が湧いてきます。

 アザーンとはイスラム教徒に礼拝の時刻を告げる呼びかけのことです。1日5回の礼拝の時刻には、すべてのモスクから決まって流れます。
 もともとは、ムアッジンとよばれる専業の朗唱師がミナレットに立ち、メッカの方向に向かって肉声で呼びかけました。最近はマイクを使うことが多くなり、ミナレットの四方に拡声器を取り付けたモスクを多く見かけます。

 ところで、あの朗々と呼びかける声は何と言っているのでしょう。諸派によって多少の違いはあるそうですが、大方は次のような内容です。
 まず「アッラーは偉大なり」を4回繰り返します。続いて「われは証言する。アッラーの他に神がいないことを」と2回、次に「われは証言する。ムハンマドがアッラーの使徒であることを」と2回告げます。
 さらにその後「いざや礼拝に来たれ」、「いざや成就のために来たれ」をそれぞれ2回繰り返し、「アッラーは偉大なり。アッラーの他に神はなし」で締めくくります。

 礼拝は夜明け、正午ごろ、午後、日没直後、夜に行うとされていますが、時間は国や地域によって違いがあるようです。
 例えば、パキスタンでは最初は日の出の40分前、2回目は自分の影が身長と同じになるとき、3回目は影が身長の2倍になるとき、4回目は日没の直後、5回目は就寝の20分前、というのが普通の場合だそうです。

 早いときは午前4時過ぎに「アッラー」の一声が始まります。朗々の響きは川風に乗って、はたまた雪山おろしに乗って流れます。
 間もなくすると、アザーンに誘われた信徒が続々とモスクへ集まってきます。イスラム教徒が床にひれ伏し、尻をあげてお祈りする風景を写真などで見ることがあります。

 礼拝の動作もきちんと決められています。ニーヤ、タクビール、キャーム、サジタ、ルクーーア、ジュルース、サラームなどという所作を繰り返しているのです。
 日に5回です。毎度、毎度モスクに出かけて礼拝という人ばかりではありません。灼熱の砂漠で熱砂に伏してお祈りする人もいます。空港の片隅で祈っていた男性はビジネスマンです。

 朗々の響きはきょうも谷を、川を渡っていることでしょう。敬虔な信徒たちには頭が下がるばかりです。

            (1995年4月のことでした)