郵便配達さんがいない町

 カナダはロッキー山脈のリゾート、バンフ。滞在中に見聞した興味ある話しあれこれです。

 「バンフは郵便を配達してくれない町です」。これを聞いて、とっさに何と不親切な行政よ!、と思ったものです。でも、違っていました。
 バンフの人口は7000人ですが、夏場は世界各国からアルバイトが入ってきて2万人から3万人にも膨れあがります。

 その人たちの住所を確かめて、郵便物を配達するのは、どんなに頑張っても不可能なので、アルバイトの雇い主が郵便局に私書箱を設けて受け取りにきてもらうのだそうです。
 もちろん、一般家庭も同じことです。「慣れてしまえば、どーってことありません」。町の人の声でした。

 「花を植える家が少ない町です」。大自然のど真ん中で暮らしながら、花を愛する人が少ないなんて…。この時も批判めいた思いでした。これにはちゃんとした訳があったのです。
 カスケード山、ランドル山といった2000m級の山々に囲まれた町は、自然あふれる山岳リゾートです。
 当然、動物もいます。エルク(ヘラジカに一種)などは友達のように共存しています。中には庭に入り込んで悪さをするものもいます。

 せっかく植えた花々が一夜にして食べ尽くされたという話しも珍しくありません。だから、初めから庭先などに花を植えないず家が多いのだそうです。
 芝生ばっかりで味気ない庭、と思うのは行きずりの旅行者だけが感じることだったです。

 「ナンバープレートは車体後部に」。これはバンフに限らず、アルバーター州全体のことでした。これも「?」ですが、自然の中の暮らしで仕方なしに採用されたお咎めなしの方法です。
 カナダでは車は中間もライトをつけて入ります。緑地帯を走ると、前照灯めがけて虫たちが特攻をかけます。

 その数は半端なものではありません。ナンバープレートはたちまち、ショック死して張り付いた虫によって隠されてしまいます。そんなことからプレートは車体後部だけでよろしい、ということになったそうです。
 確かに、プレートを車体前部にも取り付けている車は少数です。前部にあっても虫の死骸がこびりついて真っ黒。何の役にも立っていません。
 一つ一つがなるほどと納得できる臨機応変の知恵でした。

         (1997年7月のことでした)