●長谷川記念学校を訪ねて

 パキスタンは長寿村のフンザ。登山家の遺志で建てられた学校を訪問した話です。

 かつての王国、フンザの中心地、カリーマーバードのはずれに2階建ての立派な学校があります。
 「ハセガワ メモリアルスクール」。パキスタンの山をこよなく愛しながら死亡した日本人登山家の遺志で建てられた学校です。その登山家は長谷川恒男さん。日本の登山界ではつとに有名な山男でした。
 
 不屈、誰もがそう思っていた彼でしたが、8年前の秋、学校のすぐ裏手にそびえるウルタル峰(7388m)の2峰を登山中、雪崩に巻き込まれて42歳の命を失いました。
 その彼が最愛の妻宛に「もし、自分の身に何かあったときは、土地の人を幸せにする何かをしてほしい」との遺書をしたためていました。

 パキスタンはいまだに義務教育のない国です。学校にも行かせてもらえず、労働力と見なされる子供がたくさんいます。
 「パキスタンには学校が必要」。山男の遺志は奥様に引き継がれ、登山仲間や長谷川さんの弟子たちがこぞって寄付をし、パキスタン政府の協力もあって完成した学校です。

 パキスタンの教育制度はやや複雑ですが、ハセガワ学校では現在、10年生までの423人が学んでいます。
 訪れたのは、あいにく日曜日でしたから授業の様子などを見学することはできませんでしたが、先生の案内で各教室や図書室、実験室などを見せていただきました。

 やや古い形式でしたが、パソコンも数台あり、3年生から学んでいるそうです。村には交通信号機などありませんが、交通ルールも学んでいるようでした。

 黒板には日本語も書かれていました。村内を歩いていると、はっきりした日本語で挨拶する子供がいますが、学校で学んだのでしょう。英語の勉強も盛んです。
 学校に通えるのは恵まれた子供たちです。しかし、フンザでは長谷川学校の開校によって就学率が、ぐんと向上したということです。

 山男の遺志は「桃源郷」といわれる長寿村で、立派に花開いていました。

 学校の話は、たまたま旅行で一緒になった長谷川さんの登山弟子の1人から聞かされて訪問したのですが、大変に有意義でした。
 校内を一巡して、気になったのは椅子などの備品がかなり損傷したままに放置されていることでした。「予算がありませんので」。案内の先生が悪いことでもしたように、申し訳なさそうに頭をたれていました。

 廊下の片隅に募金箱がありました。ささやかながら志を投じましたが、維持管理に四苦八苦している様子が伺えて、気の毒に思いました。

 山男は死亡したベースキャンプに眠っているそうです。きっと、子供たちの成長を楽しみに見守っているのでしょう。
 この学校がいつまでも存続して、1人でも多くの子供が学べることを願わずにはおられませんでした。

 後でわかったことですが、日本に「フンザ学校設立基金」というのがあるそうです。
 〒150−0061 東京都渋谷区初台2−26−1−401
   「アルパインガイド長谷川事務局」(TEL03−3370−8522、FAX03−3320−0398)に設けられています。
 「フンザ学校設立基金」の郵便振替口座は「00140−1−23664」です。学校を訪ねた1人として、みなさんのご協力、お力添えをお願いします。
          
          (2000年9月のことでした)