●スーツケースは人質?です

 イランの首都、テヘラン。「ホマ」という一流ホテルで体験したスーツケース不明騒ぎの顛末話です。

 ケルマンシャーという町に移動するため、バスで空港へ向かうことになりました。乗り込む前にスーツケースを確認したら、バスのトランクには10個しか積んでしません。その中に妻のはありましたが、私のは見当たりません。
 添乗員、ガイドも含めて16個のはずです。しかも、先ほどまではロビーに並んでしました。

 「おかしい」。ドライバーに尋ねたら「テン。OK」と繰り返すばかりです。「全部で16個だ」と、何度言っても通じません。
 訳のわからない問答を繰り返していたら、10分ほど後に残りの5個がホテルマンに引きずられて到着しました。

 添乗員の説明によると、イランはすべてが現金精算。団体ツアーといえども同じです。今回の場合、ガイドがフロントで精算を終わるまで、ホテル側が5個分を「人質」として預かっていたのでした。
 「スーツケースは精算の人質だな」。そんなことを思っていたら、添乗員ががうまいことを言いました。「イランでは、いつもニコニコ現金払いです」。

 ガイドが大事そうに抱えている黒いバッグには札束がどっさり入っているのでしょう。イランはクーポン券、クレジットカード、サインなどは一切通用しない現金至上国なのです。

 こんなこともありました。ヤズドを出発する際、添乗員が「キーを返していない人はいませんか」と、大慌てでバスに飛び乗ってきました。
 「私でーす」。後方で女性2人が手を挙げました。それをひったくるようにしてフロントへ駆け出しました。今度は添乗員のパスポートが人質でした。キーと交換に返してもらったそうです。

 リビアではホテル側が宿泊者全員のパスポートを預かり、キーと交換に戻してくれる、ということがありました。それ以来の体験です。
 最近はイラン方式を採用する国が増えてきているとか。アメリカでは添乗員のカードを人質にする州があったり、ある程度の前払いが必要な州があったりするそうです。

 「スーツケース、キーなど何事も確認を忘れずに」。今回の出来事は旅の初心を思い起こさせる大切な体験になりました。


          (2001年4月のことでした)