●ナマクワランド「始末記」


 南アフリカは「神々の花園」などと形容されるナマクワランド。開花情報を巡る旅行会社とのやりとりの顛末話です。

 ナマクワランドは早春のある時期、砂漠の荒野が広大な花園に化身する神秘の営みで観光客に人気の場所です。しかし、私たちが訪れたときには花はなく、広漠とした風景ばかりでした。

 このあたりのことは旅行記に詳しく書き、問題点も指摘しました。始末記はアンケートに対する会社の見解、その後のやりとりをまとめたものです。何かの参考になればと、あえて書き留めることにしました。

 前置きが長くなりましたが、これからが本題です。

 帰国後1週間が過ぎても会社からアンケートに対する反応がありません。旅行中に送ったFAXの回答で終わりにされたのではたまらないので、会社の掲示板でアンケートに書いたのと同じ内容、つまり@開花遅れがわかった段階で緊急連絡して参加の意思を再確認すべきであったAあまたホテルがある中でわざわざ荒野の一軒宿に連れ込んだのはなぜか―を問いました。

 掲示板に書き込むについては、その是非をずいぶん深慮しましたが、これから同社のツアーを利用する方にも参考になるはずだと判断しました。     
            
 私の問いに関連して多くの方から投稿が寄せられました。大半は私の言い分を理解してくれたもので、その反響の大きさに驚いたものです。

 その2日後、会社から速達便が届きました。
 ナマクワランドの開花情報は現地の公的機関から得たものであること、安宿に関しては現地の旅行会社に任せていたことなどが明示されていました。
 言い訳がましいことが並べられ、出発前に「開花遅れの予想を伝えていた」と開き直っていました。

 そのうえ、予定のコースを変更して花が咲いているところをあちこち案内したともあります。ただ、ナマクワランドの花が見られなかったお見舞いとして会社の旅行割引券が同封され、格落ち安宿に関しては相応分の補償をするという内容です。
 しかし、私の問いには返答がなく、とうてい納得のできる話ではありません。

 すぐにメールで感想と反論を送りました。
 @開花予想は公的機関の情報によるものとしているが、現地に観光客の姿がなく、ツアーを中止した会社もあるのはなぜか
 A本来のコースを変更して花のあるところをあちこち案内したと言うが、写真タイムだけのところが多かった。事実誤認も甚だしい。本来のコースを見られなかったので損したことにならないか
 B参加者の事前情報を無視したのはなぜか
 C安宿の件はどうだったのか
 D格落ちホテルの補償は当然であるが、旅行割引券とは慇懃無礼な話。問題の本質をわかっていない―など長文でした。
 
 即刻、担当者から電話で事実誤認とはどういうことかと説明を求めてきました。事例を2つ挙げて説明しました。その際、バスを止めただけでも「案内」になるのかと逆質問したら、そんなことはありませんという返事でした。

 その間にも掲示板には投稿が寄せられました。会社が何も答えないのはおかしい、という指摘もありました。

 その後、会社からはなしのつぶてです。またもやこれでお終いなんかにされてはたまりません。かなり辛口の第2弾メールを送りました。

 公的機関であろうがなかろうが、参加者にあやふやな情報を提供したのは紛れもない事実。そのために金銭的、精神的な損害を被ったのは参加者である。一方的な瑕疵によって起こされた問題であり、何らかの補償をして当然である―と。またまた長文でした。

 その間にも、メル友などから様々な情報が寄せられました。A社もB社もツアーを中止したよ。C社は参加者に事情を説明してコースを変更したよ―。やっぱりそうだったのか、という話ばかりです。

 会社は驚いたようです。10月4日、会社から速達第2弾が届きました。社長名で次のような見解が示されていました。

 開花情報の収集につとめたし、出発前に予告もしたので免責事項を満たしており、法的な問題はない。しかし、情報収集のあり方にはまずさもあったと反省している―との内容でした。

 総体的には、これまでの説明を繰り返し、何とか責任回避ができればという内容ですが、この問題を反省し、教訓として社員一同初心に返り、参加者の納得できる旅づくりに努力すると明示されていましたので、不承不承ながら矛を収めることにしました。
 今度はお詫びとして、旅行代金のうちの若干を返却するむねも追記されていました。

 しかし、この期に及んでも釈然としません。第3弾のメールを発信しました。

 法的問題云々は見解の相違である。そこまで言うのなら、開花遅れを知った段階で参加の意思を再確認しなかったのはなぜだったのか。参加者の気持ちに思い至らなかったことが問題の根幹なのだ―と。

 私が最初に尋ねたことにも答えていません。その点を最後に指摘したら、安宿の件についてだけ返事がありました。
 バードウオッチングの予約が多くて、予定のホテルが確保できなかったという弁解でしたが、これは怪しいものです。

 きれい事を言うわけではありませんが、本当のところは返金など当てにしていませんでした。問題は旅つくりの根幹に関わる姿勢、理念を問うことだったのです。
 会社もさるものでした。何とか尻尾を捕まれまいとして、のらりくらり戦法に終始。反省の言葉を引き出すまでには、ずいぶん時間を費やしました。

 最後の最後にと次の3点だけは念を押して、この問題に終止符を打ちました。
 @自然相手のツアーの場合には的確な情報収集に努めること。もし今回のように開花が定かでない場合には参加者に緊急連絡して、それでも参加するかどうかの意思を再確認してほしい。
 Aそれでキャンセルする場合にはキャンセル料の要、不要も明確に示してほしい。
 B不幸にも今回のような事態になったら、言い訳がましいことを並べてその場を繕うようなことはせず、速やかに経緯を説明し、反省すべき所は反省する誠実な対応をしてほしい。 

 会社にとっては目を伏せたくなるような内容でしょうが、私はいまもこの会社を評価しています。
 日頃の対応も良好、魅力ある企画、旅行中に毎日配布される添乗員のマップは、私が利用するどの会社よりも優れているように思います。
 
 その会社にして、お客をないがしろにした今回の問題が起きたのです。残念でたまりません。こんなことで長年かかって築いてきた信頼を失ってほしくなかったのです。

 私が参加者の誰よりも厳しく姿勢を正したのも、本意はそこにあったのです。この問題は様々な形で広く伝搬するに違いありません。会社にとっては大きなダメージだったと思います。
 お客の見る目も厳しくなりました。旅行会社もこれまでのように代金前納のシステム、現地の事情による変更などの便法に甘えることなく、たゆまぬ意識改革を目指してほしいと願うばかりです。

        (2003年9月のことでした)