●砂漠の「お助けマン」たち


 北アフリカはモロッコ。アトラス山脈を越えて砂漠地帯で見かけた珍商売の話です。

 私たちは「迷路の都市」といわれるフェズからバスに揺られてアトラス山脈を越え、サハラ砂漠へと向かいました。
 アトラス越えは雪中のドライブ。モロッコでこんな大雪が見られるなんて、と感激しながら山脈を下ると、そこは一転して茶色の世界。

 エルフードという砂漠の入り口の町に宿泊、翌早朝はメルズーカの大砂丘から日の出見物です。暗闇の中を4輪駆動車で出発。砂漠のがたがた道を30分余り振り回されて駐車場に到着しました。暁天の星が瞬いています。

 ここから砂丘の裾まではラクダの背に揺られるか、徒歩で行くか、どちらかお好きなように、です。私は徒歩組に加わりました。

 ラクダは伝統衣装のジュラバやカラベーヤを着た飼い主に引かれ、緩やかな砂の坂道を上ります。その後に従う徒歩組の周りには、ジュラバ姿の男たちがつかず離れずして様子をうかがっています。 
 足もとは細かい砂地。足首まで潜り込んでしまい、歩みは遅く心許ない話です。

 歩き始めて間もなくジュラバの男たちの出番がやってきました。足を取られて難渋する人を見つけるやいなや、さっと寄ってきて手を貸しました。男たちの仕事、それは「お助け業」だったのです。

 砂丘の麓でラクダを降りた人は、徒歩組と一緒に胸突き八丁の急坂を上ります。歩きにくさはこれまでの比ではありません。ずるずる滑ってなかなか前へ進みません。3歩進んで2歩下がる。そんな状態です。

 砂丘の上空は刻々と白んで、日の出間近を告げています。焦れば焦るほど難儀します。いよいよお助けマンの稼ぎ時です。薄明かりの中で「手を貸して」と叫ぶ女性が急増し、ジュラバ姿が声の主めがけて急ぎます。

 砂丘の頂上から見下ろすと、お助けマンに手を引かれて登ってくる人たちの姿がいくつもあります。中には2人に抱えられた女性もいます。

 日の出を眺めた後は同じ道を引き返します。往路で仕事にあぶれたお助けマンは観光ガイドに変身です。あれこれ話しかけてきます。
 適当に相づちを打っていたらガイド料として20デラハムを要求されました。こんな商売が成り立つのも厳しい環境の砂漠だからでしょう。

 お助けマンがいなかったら、せっかくサハラに来ながら荘厳な朝日を見ることなく引き返す人もいるのではないでしょうか。必要にして不可欠な「お助けマン」でした。

 お助けマンにはこの後も出会いました。川を渡って巨大なカスバ・アイドベンハドゥを見学したときです。水深の浅い川ですが、川中には破れた砂袋や石ころを並べてあるだけ。

 その上を渡河するのですが、その時を狙って手を貸すのが地元の子供たち。私たちが渡り始めると、岸辺で待ちかまえていた男女が一斉に駆け寄って手を差し出します。
 しかし、川幅は20mほど。砂漠のように難渋する人もいません。1人が仕事にあり就いただけでした。

 岸辺には20人ばかりがいました。小遣い稼ぎでしょうか、それとも家計の足しにと頑張っているのでしょうか。貧しそうな村です。おそらく後者でしょう。元気で健気な子供たちでした。

            
            (1999年2月のことでした)