●高山病予防には「コカ茶」

 世界でも有数の高地に属するペルーとボリビア。高山病予防にコカ茶が有効だったのでは、という話しです。

 私が旅したコースはペルーの首都、リマ付近を除くと標高2000mから4400mほどの高地でした。パキスタンと中国の国境にあるフンジュラフ峠(4700m)で大変な苦しみをした前歴がある私には、いかに高山病を乗り切るかが最大の課題でした。

 残念ながら標高2800mのユカイでツアー仲間の第1号高山病者になってしまいましたが、その後、何事もなく過ごせたのはコカ茶のおかげではなかったか、と思っています。

 コカ茶はコカの葉を煎じたお茶で、薄い緑茶に似た味。カップにコカの葉が何枚も入っているときもあります。
 ペルー国内、特に山岳地帯の主なホテルではコカ茶を自由に飲めるように、ポットを常備しています。食後にはウェーターが必ずコーヒーか紅茶、それともコカティーかと尋ねます。

 バイキングの場合はテーブルにコカ茶のティーパックが用意されていることが多く、また水筒を持っていけば、いつでも入れてくれます。
 クスコのホテルでは、ロビーのポットの前で靴磨きの少年がサービスに務めていました。ホテルの従業員で手が空いる者が入れ代わりにサービス役を引き受けるようです。
 
 ですからチェックインしては1杯、食後に1杯、移動中は水筒から1杯、というわけで、コーヒーよりも飲む機会が断然多くなります。
 コカといえば麻薬、コカインの原料ですが、アンデスに暮らす人々は葉を噛んで疲労を回復させ、空腹感を満たしていました。

 現在は栽培にも厳しい規制が設けられていますが、市場には袋詰めされたコカの葉が売られていたりします。

 医療用の麻酔薬としても使われ、庶民は傷の手当てにも多用したそうです。
 現在でもボリビアでは歯磨き粉やガムなどの材料の一部に用い、クスコ近郊ではコカ占いもあって、日常生活に密着しています。

 どこへ行っても「コカ茶は高山病に効用あり」と聞かされました。科学的な根拠には無知ですが「鰯の頭も信心から」という諺もあるので、朝、昼、晩、その間にも、といった調子でせっせと飲みました。
 富士山と同等、あるいはそれよりも高い場所で観光し、宿泊し、その都度、高山病を心配しましたが、ユカイ以後は万全の体調を保つことが出来ました。

 高度順化が上手くいった、といえばそれまでですが、私はコカ茶効果があってのことだったと信じています。かりそめにも「鰯の頭…」などと揶揄したコカ茶には申し訳なかった、と平謝りの心境です。

 「そんなに飲んで中毒にはならないの?」という声が聞こえてきそうですが、10日間やそこらではまったく心配ありません。ただし、コカインの原料ですから日本への持ち込みはご禁制です。
 いずれにしろ、私にとってはありがたい、ありがたい最良のドリンクでした。

         (2002年6月のことでした)