●中世が現役のショプロン

 オーストリアの国境に近いハンガリーのショプロン。中世の建物が現役として現代に蘇っている話です。
 
 ショプロン?。訪れる日本人観光客はまだ少なく、馴染みの薄い小さな町です。アルプス山系の山麓にあって、周辺を襲った様々な戦乱からも運良く逃れられました。

 そのおかげで環状通りに囲まれた町並みには、中世からバロック時代にかけての歴史的な建物が並んでいます。壁の装飾一つにも古(いにしえ)の懐かしさが漂う、そんな町です。

 旧市街の真ん中に町のシンボルである火の見櫓の塔をはじめ、ヤギ教会、三位一体像(ヨーロッパを襲ったペストが終息したのを記念して建造)などが集まる広場があります。

 広場を抜けると、カラフルな家並みの広い通り。その両側にはホテルやレストラン、アパートなどがずらり。
 外壁は黄色あり、緑色あり、白色と薄茶色のツートンカラーあり。いかにも近代的な装いです。

 しかし、ひと皮むけばすべてが中世の建物なのです。400年、500年前の建物が補修され、改装されて現代に蘇っているわけです。
 壁の一部や窓枠、門の上に残された装飾が、古を偲ぶよすがとして何気ない様子で通行人を見守っている、そんな風に感じられました。

 まるで、絵本から飛び出してきたような町、と表現したら陳腐に過ぎるでしょうか。

 改修工事で一番難儀をするのは土台だそうです。まず最初に手がけるのが土台ですが、案内してくれたガイドは「これが終われば工事の50%はすんだようなものです」と言いました。「建物の本体はがっちりしていますから」と。
 ヨーロッパを旅すると、ショプロンに限らず「建物を大事に使う」同じような町をよく見かけます。

 築後わずか30年、50年で大きなビルの取り壊しが始まる日本。産業廃棄物に埋まる日本。地震国とはいえ、「建造物を有効利用」する意識がまだまだ低いように思われます。

 特に産業廃棄物の捨て場確保が深刻な問題になっている日本です。「一人一人が町のありようを真剣に考えなければ…」。

 火の見櫓の塔から何百年間変わることなく続いている風景を眺めているうちに、そんなことをぼんやりと考えました。

        (2001年6月のことでした)