●ヘッドライトにワイパー


 北欧はフィンランドの首都・ヘルシンキ。寒冷地対策ばっちりの車に出会った話です。

  シベリウスの生家で名曲、フィンランディアを聴いたり、シルバーラインをクルーズしたり、2日間にわたって周辺の観光地巡りをした私たちはヘルシンキへと戻りました。

 午後からの市内散策に備えて、大聖堂近くのレストランで昼食したのですが、その駐車場でおもしろいものを見つけました。

 ヘッドライトに小さなワイパーを取り付けた乗用車が何台も駐車していたのです。ベンツ、ボルボ。なじみの「外車」にばかりではありません。トヨタ、ニッサンといった「国産車」にも取り付けられていました。

 私はこんな車を見たことがありません。他のみなさんも同様でした。「かわいいワイパーだこと」、「雨の時に効果があるのかな」など、など、車を取り巻いてかしましいことです。

 地元の人に尋ねると「雨?。いやいや地吹雪対策さ」とのことです。
 北欧の冬は日中でも薄暗く、いつもライトをつけての運転になります。地面から舞い上がる吹雪の日には、ライトに雪がこびりついて前が見えなくなることがあるそうです。

 「雨対策?」と思っていたのですが、ここは北極圏に近い北国でした。冬への備えはこんなところにも工夫が施されていたのでした。

 車を購入後に取り付ける人もいるそうですが、最初から特別仕様になっている車も多いとのことです。
 ひょっとすると、最近では日本国内の寒冷地やスキー場の駐車場でも見られるかもしれませんが、私は目撃したことがありません。

 その後、ノルウェーやスウェーデンにも出かけましたが、ところどころで小さなワイパーをつけた車に出会いました。
 
 冬場には氷点下20度にも30度にもなるという酷寒の地。車に関してだけでも他にいくつもの防寒対策があるそうです。
 詳しくは聞けませんでしたが、バッテリーを凍結させない工夫だとか、燃料を凍らせない工夫だとか、だそうです。

 新緑が美しい季節。バスで走っていると、短い夏を楽しむキャンピングカーが行き交います。そのキャンピングカーにさえワイパーがついていたりします。「夏でも安心できません」ということでしょうか。

 小さなパイパーは、私たちに北欧の冬の厳しさを想像させる「教材」だったのです。
 
             (1996年6月のことでした)