●5000m級は「名なしの山」
 名峰、秀峰が連なるパキスタン。5000m級の山には名前がなく、地図にさえ載せられないという話です。

 パキスタンは数多くの登山家を惹きつける山岳の国でもあります。K2、ナンガーパルパットなど8000m級の山が5峰、7000m級が25峰、6000m級が100峰以上あります。

 8000m級は世界に14峰、そのうちの5峰がパキスタンにあるわけですから、確かに「高山の国」です。5000m級、4000m級ともなると、一体どれだけあるのやら現地のガイドにも見当が付きません。
 
 連日、好天に恵まれて世界で9番目に高いナンガーパルバット(8126m)をはじめ、ラカポシ(7788m)、バトゥラ(7785m)、ハラモシ(7406m)、ウルタル(7388m)、パスー・ピーク(7284m)、ディラン(7273m)、ゴールデン・ピーク(7021m)などの真っ白に輝く頂を眺めることができました。

 その他にも、あっと驚くような純白の雪山、岩峰鋭く天を突く山、渓谷の彼方にそびえる連山など、いくつもの高山を見ることができました。
 しかし、私たちが驚嘆する「秀峰」や「麗峰」も5000m級以下になると、ほとんど名前がありません。

 間近にそびえる雪山に感動して「あれは何という山ですか」と尋ねますが、、現地の人の答えは「あれはただの山」、あるいは「名前なんてないよ」です。
 
 現地の人から呼び名をつけられている幸運な山もありましたが、大半の山々は名前さえなく、地図にも掲載されず、国際的にも認められずに、ただただ立ちつくしているのです。

 カラコルムハイウェーのパキスタンと中国の国境にまたがるクンジュラフ峠は標高4600m。周辺は雪に覆われています。
 富士山より900mも高いのに峠なのです。宿泊したホテルも2000m−2500mの地点にありました。

 山岳の暮らしぶりは大変ですが、これだけの山々に囲まれた北部は、登山家にとって魅力あふれる地域のようです。日本人登山家の中にもパキスタンの山を愛する人が多いと聞きます。

 長寿村で有名なフンザの至近にそびえるウルタル峰。2峰では長谷川恒男さんが雪崩に巻き込まれて死亡、1峰には広島大学の登山隊が登頂に成功しています。
 このように名のある山、名無しの山を至近で眺められるのは、パキスタンが最高だ、とも聞きました。

 訪れたのは初秋。山麓の村ではコスモスが風に揺れ、リンゴや柿が実り、ジャガイモなどの収穫期でした。穏やかな風景の奥にたたずむ雪の連峰は、澄んだ空気の中で美しが際だっていました。

 紅葉のころ、そしてアンズの花咲く早春…もきっとすばらしいに違いありません。「季節を変えて出かけてみたい」と望む人が多いのもわかります。私もその一人になりました。

 名前があろうが、なかろうが、パキスタンの山はすばらしい。純白の数々が瞼に焼き付いて、すっかり虜になってしまいました。
                
                (2000年9月のことでした)